次に呑む日まで

呑める日が来るまでの往復書簡

第六便 返信

お久しぶり、雨上がりの大分からジュン・チャンです。

4月は前半に朗読、後半に云年振りの裏方で、我ながら詰め込み過ぎた。

本番が4月でも、準備は2〜3月から進めていくから、特に後者は小屋入りを彷彿とさせた。仕事帰りの鍵閉めに、学館の退館を思い出した。振り返るとみんなよくやってたよなあ。体力が保たないよ。

とはいえ僕は楽しかったし、関わった人達の次へと繋がっていったらいいなあと、毎度のことながらささやかに願っている。この想いは学生時代から変わらない。むしろ時を経て、強くなった気もする。

タカシナはどんな気持ちで舞台に関わっていたのかなあ。役者と制作だと、ちょっと違ったりするのかな。

 

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取り止めのない話、ということで。

返信だから、まずはタカシナの書簡につらつら返信をする。

ポイントを切り出してる自覚はあるから、不愉快に思わせたらごめん。僕がビビッと印象に残ったところというので勘弁してくれ。

 

[私は、私の周りの人達がそれぞれに交わし合ったり、私に向けてくれていたりするものを別に疑ってはいないし、幸運なことに、世の中に愛のようなものが確かに存在することも知っている。でもどうも、自分をそこに代入すると考えがバグってその先へゆけない。似たような特徴のセクシュアリティは調べれば出てくるのだけど、名前を付けたら状態から属性に固定してしまうような気もしてあまり深く調べていない。そのうち変わるかもしれないし、このままかもしれないなあ、とも思っている。](第六便より)

僕は自分の性別違和、というか存在への不確かさを感じながら、悶々とした子ども時代を送ってきた。

大学でジェンダーセクシャリティに関する文献を漁ったり、講義を取ったりするのは必然だった。実家にはインターネットに繋がるような機器もなかったから、益々情報は得られなかったし。

あの頃の自分は、どうやって自分を認めてやったらよいか分からなくて、必死にしっくりくるカテゴライズを探していたように思う。

ちょうど僕達の在学中にLGBTQなんて言葉が出てきて、社会的な認知に繋がってはいったけど、それもまたしっくりこなかった。「そこに僕はいない」そんな感覚が拭えなかった。

一方で、あるカテゴライズに積極的に迎合しようとすると、自分自身の物語を見失う、という側面も僕は理解している。マイノリティ、精神疾患のラベリングが有名な話だと思う。

じゃあ、どうやって自分を認めて、受け入れて生きていけるのか。

完璧な答えはないけれど、周りの人とどう関係を築き、その中で過ごしていけるか、だと思う。今は自分を否定するものがあまりない中で、ぬくぬく過ごさせてもらっているから。居心地が良い。子どもの頃に得られなかった感覚を、今更追っているのかもしれない。

 

[たとえば恋愛は、してもしなくてもよいものだとよくよく頭では理解しているのだけど、それでも時々普通に普通の恋愛ができないままでここまできたことに、足下が寒くなるような心地になる。自分には何かが欠けているのかもしれない、と思い、それがバレないようにより陶冶された人格というものを目指していた頃もあった。誰にでも公平に優しく嫌いな人を作らず悪口を言わず、という運用を(実際にできていたかは別として)目指していたら疲れてしまった。生まれつき優しければよかったのだがどうも私は違ったらしい。強くて優しいアンパンマンに生まれたかったが違ったので馬力で解決しようとしたんだな。長続きはしなかった。](第六便より)

タカシナはよく言っていたよね、「アンパンマンみたいになりたい」って。

僕もそう思ったけど、無理だった。僕は自分や友人を貶める奴が許せなかった。「嫌いになった」じゃない、「幻滅した」のだと今ならわかる。

この辺りの話は朝まで生テレビばりに電話で話した通りなんだけど、今回関わった展示「もやもやしてることにとことんもやもやしたい」を経て、以前よりは気持ちが凪いできた。自分にしろ相手にしろ、憎み続けることは苦しいね。

未だに謝罪はないけれど、もう関わることもないからどうでもいいや、と本格的に思っている。

父を長らく憎悪していた時のことを思い出した。学生時代、18切符で故郷を旅した時に、ある種の諦めがついて楽になった。

 

恋愛至上主義でモノを見る輩に違和感を覚える。人の関係性はもっと多様で鮮やかだ。男女が2人でいる=カップルは違う。女の形だからって勝手に幻想を抱いて、僕のことを見ようとしない奴も不愉快だった。

この辺のことを丁寧に描いた作品によしもとばなな『王国』シリーズがあるが、最近読んだチェ・ウニン『わたしに無害な人』も良かった。今日読み終わったんだけど、これはやばい小説だった。ぜひ読んでみて。

 

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こんなにつらつらでよかったのかな。まあでも4月だしね。許してくれ。

季節の変わり目、お腹が冷える。まだまだ寝る時は腹巻がいるね。お互い自分を大事に過ごそう。

 

徒然なる追記。

・温泉に浸かりながら、よく死なず狂わず生きてこられたなあと思った。読書や演劇への没入、運良く良い人達に巡り会えたからだなあとしみじみ感謝した。

・ちょっと前に「おとなりコンプレックス」っていう漫画を読んだ。定番ちゃ定番の幼馴染もの+男らしい主人公と女装の似合う幼馴染というこれまた定番の設定。この幼馴染が「女として好きなんだ」等言う場面があって、まあもちろん2人はくっつくわけだけど、なんか残念だった。